レーザーディスクのように輝く絹織物―。偶然、不思議な糸を吐く野蚕を発見した長谷康貴は、その魅力に憑かれ、バイオ・テクノロジー技術者・有田芳乃の協力で、蚕を繁殖させようとする。事業は成功したように見えたが、意外なパニックがまき起こる…。ミステリータッチの本格SF。第3回小説すばる新人賞受賞作品。
篠田節子の描くパニックホラー。氏の作品とは初期の作品としては、ごく初期のものに位置付けられるらしく、文庫本サイズで解説まで含めて196ページと、他のホラータッチの作品のような超長編ではなく中編といった程度のページ数に収まるもの。
彼女の『弥勒』や『夏の災厄』といった圧倒的な大作に比べるとページ数が少ないためか展開の強引さが少し感じられる。それでも、バイオ・テクノロジーによって巨大化と雑食化を施された無表情な蚕たちの行進の描写などは、読んでいてぞぞぞぞーっとした生理的嫌悪感が湧き上がってくる。この人は、人間が根源的に顔を背けたくなることを真正面から書くことがとても巧みだと思う。
作品としてはいつものパターンというか、悪く言ってしまうとテンプレ通りの物語の運びなのだけど、それでも隅々まで恐怖の行き渡った世界に引き込まれてどんどんページを読み進めてしまう魅力があり、とても面白かった。たぶん映像化されたらおしっこちびるくらいには怖い。
篠田節子のホラー小説はとても好きで、幾つかつまみ読みしているのだけど、僕の考える篠田節子ホラー作品のテンプレはこんな感じ。
ネタバレはない。
他にも学生運動の過去を持つ女主人公とか、いろいろパターンはあるんだけど、まぁこんな感じ。
類型的な展開なのにどの作品を読んでも一級品の恐怖が味わえるなんて凄いよね。せっちゃんのホラー小説最高や!
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