元ヤフー社長で東京都副知事の宮坂さんが社長のための「キャリアダウン」の話を書いていた。
ちょうど後任の川邊さんがLINEヤフーの取締役を退任したタイミングでもあり、川邊さんに向けて書かれた文章なのかなと思わなくもないが、社長でなくてもキャリアチェンジを迎えた・あるいは考えている元ヤフー関係者に広く読まれてほしい内容だ。いいこと書いてある。
正直に言えば、色々考えた社長を辞めた後に空白の時間があったわけじゃなくてたまたまそうだったにすぎない。結果論でもある。でも、あの時間での体験がその前とは全然違う今に繋がったと思う。
さらに自分はいろんな意味で恵まれていたからこういう過ごし方ができたことは間違いない。1社目から2社目の転職の時は余裕がなくて2日しか空けずに働いていた。
だからこそ時間という財産のある人で、退任を考えている人から相談を受けた時には、こう伝えている。
「しばらく何も決めないほうがいいよ」。
しばらく何も決めなくていい、これは本当にそう思う。僕も会社員生活から降りてすぐに次の何かに向かって登り始めていたら、今頃まぁまぁ消耗してた予感はある。ゲームやってアニメ見てマンガ読んで散歩するだけの毎日が思ったより飽きなくて向いていることに気付けなかった可能性もある。向いてることは自体サバティカルで事前予習したから確信に近いものはあったが。
20代30代だとギラギラしていて、転職して年収が何パーセント上ってキャリアアップ、みたいな感覚が普通かも知れないが、40代を過ぎるとなかなかすべての条件が良くなる転職先を見付けるのは困難であって、キャリアダウンを受け入れなければならない場面は珍しくない。僕は宮坂さんと違って会社のトップも経験していないし、何者にもなれずそのまま無職転生した立場であるが、今のところ無職って自分の立場を受け入れられそうだ。次のキャリアに向けての「バトンゾーン」ではなく、もうキャリアエンドである。
退職エントリでも書いたのだけれど社長としての宮坂さんの、社員からの人気ぶりはちょっと異常で、2012年当時はまだ浸透していなかった「推し活」って行動の「推される対象」って表現が一番しっくり来るように思う。後任だった川邊さんや小澤さんも一定数の社員から人気があったけど、宮坂さんの誰からも好かれていた人気ぶりには及ばなかったように僕は記憶している。
敵を作らないって言うか、敵がいないんだよね。気が付くと誰もが宮坂さんのファンになっちゃう。社長就任が発表されたとき僕はヤフーの地図サービスに従事していたため「えっ、誰? メディア事業の責任者? ニュースや天気のボスだった人? へぇ~」みたいな感想だった。そしてすぐに自分でもびっくりするくらいファンになってしまい我ながらちょろ過ぎる。
人気だった理由は何と言っても人間性が大きいだろうけど、宮坂さんって起業を経験せず会社員から社長になった人だからか、社員と同じ目線で会社員の気持ちがわかる性格だった点も関係してるんじゃないか。業績がよかった期に必ず特別賞与を出して「今日はボーナス支給日です! 業績よかったから特別に増えてます! 嬉しいよね!」ってメッセージが添えられるんだよね。「社員と会社はイコールパートナーです」って様々な数字を社員向けに開示していたし。
でも社員から見た一番の社長が必ずしも株主から見た一番の社長ではない訳で、たぶん株主の視点では前任の井上さんが最高の社長なのだろう。何せIPO公募価格から株価240倍だ。ハンドレッドバガーどころじゃない(もちろん世の中がドットコムバブルって特殊要因もあった)。社員から推されたり社員に還元してる社長であれば、必ずしも株価を上げてくれる相関性があると言えないのだ。
井上さん宮坂さんはリストラだけは絶対にやらないと公言して憚らない社長だったけど、例えば今は株価低迷している日産だってカルロス・ゴーン氏が社長時代で大量リストラした頃に業績も株価もV字回復した過去があるのだし、現在LINEヤフーで人をどんどん減らしてる出澤さんが、この先で株主から高い評価を得る可能性は十分ある。固定費の削減はそれくらい業績への影響が大きいのである。株主は経営者を人柄よりも結果(業績・株価)で評価する。
他社の経営者から好かれる・尊敬されるって視点で見ても、どう考えても孫さんみたいな勝負師の方が、穏やかな宮坂さんよりも人気になるだろう。会社を創業する人ってギラギラした熱量ある方が多いし。
※僕はヤフーもLINEヤフーも、今まで一度も株主だったことはないし、今後も株主になる可能性はありません。これはポジショントークではありませんし、株式を買うことを推奨する行為でもありません。投資は自己責任で。
よく「合併していなかったらまだ会社員やってたんですか?」って聞かれるし、その答えは(例え出社回帰があったとしても)Yesなんだけど、多分どこかで会社員生活に飽きて45-50歳で辞めてたと思ってます。その場合コメダ珈琲店のフランチャイズオーナーに挑戦してる可能性も確かにあった。が、宮坂さんの書いたキャリアダウンの話を読むと、辞めて即FC開業プランは結構あやうい橋だったな~と思わされた。
宮坂さんの築いたヤフーの会社文化は本当に好きだったし、あの時代に同僚として繋がれた人には今も感謝してる。経験も人脈も、すべて大事な財産です。一緒に働ける東京都庁の人が羨ましいよ。
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