虚栄の都・ハリウッドに血で爛れた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。ここにミステリの新たな地平が開かれた。
長い。本筋と関係無い部分が長い。1,000ページ弱におよぶ内容の3分の1以上を通して語られるエリザベート・バートリの吸血鬼伝説、もちろんこれは作品の重要な伏線として後から利用されるのだが、それにしても長かった。
しかし、そのボリュームの多さという欠点を補って余りあるほどの終盤の怒涛の謎解きがとてつもなく面白い。
作品の壮大さと並んで、物語の随所にも「ハリウッド」を強烈に意識した演出が配されている。名探偵たる御手洗の登場シーン一つ取っても、馬に乗って現れたり、映画スタッフを前に大立ち回りを演じさせたり。
社会派としての側面も非常に強い作品で、美容の民間療法への警鐘とも読み取れる部分などは、刊行から15年以上経った現在の日本でも、十分に省みなければならない話である。
長いが、一気に読めてしまって面白かった。
映画の方は、小さい頃から金曜ロードショーで何度も鑑賞したことがあったのだけど、原作(と呼べば良いのかな?)のコミックは初めて読んだ。
よく言われているように、映画とは全く話の展開が異なるのは勿論なんだけど、
この辺りの“宮崎アニメ”と呼ばれてきた作品群は、結局のところコミック版ナウシカを解体してそれぞれ再構築された物語なのかなぁと思った。とにかく色々な概念がもの凄い密度で混ざっていて、1回読んだだけで全てを分かったつもりになるのは難しい。
この作品を今までネタバレ踏まずに済んでいて、今日読めたことは、とてもラッキーだった。
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