さらし首の名所暗闇坂にそそり立つ樹齢2千年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ?近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とはなにか?信じられぬ怪事件の数々に名探偵御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨をきわめた。本格の旗手が全力投球する傑作。
文庫本で670ページを数える超長編ながら、『水晶のピラミッド』のような冗長なエピソードは一切入っておらず、また、物語冒頭で語られる“台風明けの屋根上に跨り絶命していた死体”を再現する手順の、あっと驚くアクロバティックで鮮烈な印象もあり、一気に読んでしまった。
おどろおどろしい大楠の人喰い伝説に、作中人物の藤並譲による処刑講義、舞台を一時スコットランドに移して提示される“巨人の家”の謎(これの謎解きの「やられた!」という感じがまた素晴らしい!)、ツンツンだったレオナが段々デレて行くところ等々、大変に見どころの多い一冊。脇道だと思っていた小さなエピソードも含めて全ての伏線が綺麗に回収されるプロットは凄いとしか言いようがない。
読み終わって少し冷静になってみると、屋根上の死体は「ねーよww」としか言えないんだけど、夢中になって読み進めている時点では「名探偵たる御手洗が言うなら、あるいは・・・」と思わせてしまう面白さがある。
最近のツッコミ
参号館 日記(ariyasacca)