「J・Mを殺したのは誰か?」。私が読んだ患者の原稿は、その一文で結ばれていた。解決篇の欠落した推理小説のように…。J・Mは、自分より醜い怪物を造るため、5人の子供に人体改造を施した異常な科学者。奴を惨殺したのは、どの子供なのか?―小説家の私と探偵の彼が解明する衝撃の真相!(表題作)夢現、狂気と正常を往還する物語。読者はきっと眩暈する。
入院中の精神病患者の手記や、精神病患者の書き上げたミステリ小説などをテーマに3作を収録した中篇集。
どの物語もかなり凝った構造になっており、終盤になると「そういうことか!」というカタルシスが味わえる半面、あまりにも複雑な構造になり過ぎてクエスチョンマークが浮かんだまま終わってしまっているがっかり感も強い。
個人的には、新本格で括られている人たちの「この舞台はあの有名作品へのオマージュで、このトリックはあの名作のパロディなんだぜ!」みたいなあとがきが苦手なんだけど、この作品は特に饒舌に語ってる印象があった。読み終わってから待っているあとがきのボリュームが、もうお腹いっぱいですとしか感想が出て来ない。
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