高校野球界のスーパースターがガソリンを全身にかけられ焼死するというショッキングな事件が起こった。たまたま事件現場に行き合わせた弟の進也と、蓮見探偵事務所の調査員・加代子、そして俺――元警察犬のマサは、真相究明に乗り出す。社会的テーマと卓抜な人物描写で今日を予感させる鬼才・宮部みゆきの記念すべき爽快なデビュー長編。
高校野球の本格派ピッチャーで将来を期待される投手・諸岡克彦が殺された事件を、探偵事務所で飼われている元・警察犬マサの視点から描かれている。
20年も前の作品なのに、現代的な青春小説としても、また、高校野球界の暗部に光を当てた社会派小説としても、ほとんど違和感を覚えることなく読めてしまうことが凄い。*1心理描写や人物同士の掛け合いも軽妙で面白い。
しかし犬視点で書かれなければならなかった必然性みたいなものは、最後までよく分からない作品ではあった。物語を通じて成長が描かれるという点でも、克彦の弟の進也が主人公でも良かったように思うなぁ。犬のマサが主人公のシリーズ物が幾つかあるのかな?
*1 もちろん、公衆電話といった、小道具面での現代とのミスマッチは少々ある。
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