米国から帰国した真賀田四季は13歳。すでに、人類の中で最も神に近い、真の天才として世に知られていた。叔父、新藤清二と行った閉園間近の遊園地で、四季は何者かに誘拐される。瀬在丸紅子との再会。妃真加島の研究所で何が起こったのか?『すべてがFになる』で触れられなかった真相が今、明らかになる。
天才・真賀田四季の10代前半、(やや早熟な)青春時代のエピソード。全体を通して、四季の視点から描写されているため、思考の切り替わりの速さというか、スピード感がもの凄い。
四季が両親を殺す決断に至るまでの変遷が表現されており、『すべてがFになる』の原点と位置付けることもできるだろう。本書を読んでから『すべてがFになる』を再読すると、また違った発見がありそう。
S&MシリーズとVシリーズの両方からオールスターと云わんばかりに重要人物が続々と登場し、非常にファンサービス精神溢れる作品ではある。逆に、両シリーズを未読の人がこれを読んで面白いかと聞かれると、置いてけぼりになってしまうだろうなぁ。
作中、四季が、とある女性の人生における選択を醒めた視点で考察しているのだけど、この『四季・夏』の物語を経てS&Mシリーズで何度か姿を見せた時、四季の性格もその女性に随分と近付いているように感じられる点も興味深い。森博嗣が作り出す天才像って、「年を取ると鋭さが減ってしまう」ことをまざまざと実感させられてしまう。
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