煉瓦造りの洋館で起きた驚くべき殺人事件。屋敷には底意地の悪い実業家の女主人とその甥が住んでいた。叔母の財産を狙う甥の殺人計画はいかに練られていったのか。その手記を入手するため、取材者の“私”は屋敷に住み込み、事件を追体験していく―そして明かされる衝撃の真相!!名手の叙述ミステリー。
名手、折原一の、凝りに凝った構成の妙で読者を騙す物語。
叔母を殺した智樹の残した手記(殺人計画)と、その手記を手に入れるために叔母殺人事件の舞台となった屋敷に住み込むこととなった"私"、それぞれの一人称視点で進められるストーリーが、終盤で余りにも見事に交錯して、思わず「ギャー! 作者にやられた!」と叫びたくなってしまう。
この人の作品は読者の予想の斜め上を行こうとする余り、難解になり過ぎて読者がポカーンと置いてけぼりになりがちなのだけど、『叔母殺人事件<偽りの館>』は、初期の名著である『倒錯のロンド』『倒錯の死角』などと同様に、仕掛けられた叙述トリックがシンプルかつ「そ、そこかー!」みたいな感じでストレートに決まっており、相当に爽快な読後感を満喫できる。
相変わらず主人公が何もできないくせに自信だけは人一倍強い最悪な中年男性で笑ってしまうのだけど、作中の小道具がワープロからパソコンに変わって時代を感じたり、けれども何の脈絡もなく発見される屋根裏部屋や、登場人物があっさり気を失ってしまうところは他の作品と同様だったりと、折原ファンには楽しみの多い一冊でもあった。
折原一作品の一冊目にもおすすめ。かなり面白い。
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