KADOKAWAの偉い人が大変不適切な発言で反省したり(PDF)、ホビー転売問題が再燃したりといったニュースが続き、同僚とも「外出できないからガンプラでも始めようかと考えていたけどこういう話を聞くと手を出すハードル上がる」みたいな事をチャットで話題になり、そういえば以前にガンプラの作品をKindleのセールで買ってたなと思い出して読んだ。
作品名の「HG」はレイザーラモンHGではなく「ハイグレード」という『機動戦士ガンダム』系作品の登場メカを1/144スケールで再現されるプラモデルのブランドである。僕もガンプラは小中学校で卒業して、成人して以降、ほとんど組んでいない。きっとすごく進化しているんだろうな。会社員を早期リタイアする機会に恵まれたら挑戦したい(言うだけ)。
『HGに恋するふたり』は、三十路残念美人OLの神崎さんが、親からお見合いしろと言われ続けて暗黒の日々を送っていたところに、ガンプラ好きで玩具屋の娘である宇宙(そら)ちゃんと出会い、高校生時代に直撃世代だった『ガンダムSEED』のガンプラにハマって行く話である。ガノタ的には「いやいや、宇宙って書いて名前そらちゃんって」など、かなりツッコミどころ満載で楽しく読める作品だと言える。なんかAmazonのレビュー欄は宇宙世紀おじさんガチ勢ガンプラおじさん達の辛辣コメントが賑わっているが、中等症ガノタである自分くらいだと、かなり面白く読める。趣味に性別や老若といった区切りは無いんだという、今の時代性にもマッチしているように思う。
この作者さんは別作品『不器用な先輩。』で先に知っていた人で、とにかく目の描写に力が入っている。目力(めぢから)がすごい。少女マンガよりも目の中に宇宙が広がっていて、強いメッセージを読者に出している。
各話の引きゴマでSEED/SEED DESTINYのオマージュと思しきポーズと台詞が登場して、スパロボでちょっと知ってるくらいで、アニメを履修していない自分としては、少し視聴したい気持ちも出てきてしまった。作中で主人公が「私がSEEDにハマってた頃に生まれた子がもう高校生かぁ」みたいな台詞を言うのだが、未だにガンダムWやSEEDって新世代のガンダムと思っている自分にとっては「そうか、もう30歳前後の人にとってはクラシックと呼べるくらい経過したんだな」という感じだ。じきにナラティブやハサウェイからガンダムに入った人も多くなるんだろうなぁ。
プラモの楽しさ以上に、「マニアックな趣味を同僚や家族に打ち明ける難しさ」「同じ文脈を共有して話し続けられる仲間の居る嬉しさ」みたいな、プリミティブな感情がとても共感できるいい作品です。おすすめ。
この作品のレーベルが「角川コミックス・エース」というのが綺麗なオチなんだよな。表現の自由って素晴らしい!
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