駐日フィンランド大使館も協賛しているフィンランド出身メタルバンドの祭典Suomi Feast 2018の名古屋公演に行ってきた。
お目当ては、僕も大好きなバンドBattle Beastから半ば分裂するような形でデビューしたバンドBeast In Blackであり、このバンドの初来日ということで、日本お披露目という意味合いもあって、見逃せないフェスである。
名古屋公演の会場は、HOLIDAY NEXT NAGOYAというライブハウス。名古屋市内の主要百貨店の並ぶ矢場町駅周辺のメイン通りから2本ほど外れたところに鎮座する、プレハブ小屋のような佇まいのライブハウスである。
比較的新しいと思われる。外からの見た目に反して、中は天井も立派で、音のヌケが良さそうな印象を持った。ドリンクバーでも、飲み物だけでなくソフトクリームも販売しており、工夫が見られるハコだった。
この日の名古屋市内は、気温30度に迫る夏日でクソ暑いが、開場して中に入ると逆に冷房が効き過ぎていて辛い状況になっていた。メタルTシャツの上にカーディガンを羽織って行って正解だった。
会場のキャパシティは、見た感じでは200-300人といったところで、開場した16:30前後は余裕も見られたが、会社員などが仕事を終えて見に来る19:00以降は、ほぼ満員で盛況だったように思われる。
フェスの名称でフィンランド自身を指す「Suomi」の通り、フィンランド出身のバンドが6バンド出演する。
知らないバンドに出会えるのがフェスの醍醐味であるものの、Beast In Blackを目当てに来た自分としては、かなりキツイと言わざるを得ない。しかも出演順は5番目だし……。
チケット代の前売り券8,000円 + 当日ドリンク代600円を考えると、これくらい出演するのは妥当なのかも知れないが。
1番目は、ボーカルが男女混声であるNoumenaというバンド。名門FINNVOXスタジオ出身で同郷のAmorphisとも比較されるそうだけど、うーん実際どうなのかな~という感じ。
見てる分には楽しめたけど、女性ボーカルのマイク音量が小さくて、あまり聞き取れなかった。男側はグロウル専任ボーカルなんですね。たしかにフィンランドのメロデスシーンでは、よく見られるタイプなのかな……?
出番は30分ほどで終了。
2番目は、Mors Subitaというデスラッシュというか、SoilworkやScar Symmetryあたりに近い、いわゆる「ニューメタル」の流れを汲んだエクストリームメタルバンド。
このバンドは盛り上げ方も上手く、CDでは知らないので全くの初見ながら、楽しく見れた。あとエクストリーム系のバンドは、やっぱりドラムの手数足数が尋常でないので、曲を知らなくても取り敢えず見てて楽しいというのがありますね。
出番は30分ほどで終了。
3番目はFrosttideという、フォーク/ヴァイキング系のバンド。もうステージの幕が上がって、バンドロゴが見えた時点で「うわっ、ヴァイキングメタルっぽい!」という予感がしましたが、まさにそんな感じ。メンバーもコープスペイントしてるし。
土着的なメロディを単音リフで奏でるギターは、なかなか味があって良いものの、とにかくフェスの中盤を務めるには地味……という印象が拭えず、この日のフェスと同じくEVPの主催しているPagan Metal Hordeに招聘してあげた方が盛り上がったんじゃ……という気持ち。このバンドも持ち時間は30-40分ほど。
4番目は、フィンランドの伝説的バンドSentencedの元フロントマンでもあった、ヴィレ・レイヒアラが結成したS-TOOLの登場。ヴィレがPoisonblackを解散して新バンド結成してたことを今回のフェスで知ったわ。
音楽性としては、後期Poisonblackに通ずる、彼のダミ声を生かしたダウナーなロックンロールといった感じでしょうか。僕はSentencedでの彼の「絶唱」とも云うべき唄いっぷりが大好きでしたが、Poisonblack以降はあまりピンと来ないんだよね……。この日のS-TOOLも、「あ~、ヴィレはこういうロックがやりたかったんだね」と複雑な気持ちで見てました。
ベースの人なんかも見た目のインパクトが強く、なかなかの実力者を集めたバンドみたいだけど、なんか数年後には解散してそうだなぁという印象を受けました。みんなバラバラに動いてるんだよな~。
やはりヴィレの知名度や、平日の業務終了といった時間帯も重なってか、S-TOOLからはフロアの客入り具合もいい感じになってました。
5番目にして、ようやく僕の見たかったBeast In Blackの出番です。このバンドを目当てに来ていたお客さんも多いのか、会場が暗転してJudas PriestのNight Crawlerが流れ始めるとボルテージが一気に高まり「Beast In Blackコール」があちこちで始まる。入場SEでNight Crawlerを1曲まるまる流す、という演出は、この日の出演バンドではBeast In Blackだけが取っていた手法だったのだけど、もしかすると彼らなりのライブお作法みたいなものが決まっているのかな?
パフォーマンスも素晴らしく、1曲目から漫画作品『ベルセルク』から影響を受けたといわれるバンド名と同名のアンセム『Beast In Black』に始まり、とにかくボーカルのヤニスが繊細なファルセットからスクリームまで何でもこなしてしまうのでスゴイ。Battle Beastを解任されたアントンのギターとスクリームも冴え渡り、ギターx2人とベースの3人によるAccept顔負けなギターフォーメーションのかっこ良さといったら。S-TOOLがバラバラに動いてたから、Beast In Blackの統一された動きが、余計にカッコ良くキマって見えるんだよね。
『Crazy, Mad, Insane』ではサイバーグラサン(?)を着用して出オチな演出で会場を笑わせるコミカルな一面も披露し、とにかくリハーサルをしっかりやって来てくれたんだなぁ、と好印象しかない。会場からの「Beast In Blackコール」にアントンが感極まってる様子もあり、本当に感動的なステージでした。
バラード『Ghost In The Rain』も、歌唱力と、アントンの目を瞑っての泣き泣きギターで聴かせてしまえるのがすごいよね。アルバム1枚しかリリースしてないバンドの実力ではないぞ……。
彼らはこれから日本でさらに人気が出て欲しいし、出ると思います。いずれは単独公演も実現して欲しい。文句なしに、この日のベストアクトでしょう。
トリを務めたのは、フィンランドのヴァイキングメタルバンドTurisasで、僕は彼らの1stアルバム『Battle Metal』しか持っていなくて、3度目の来日らしいのだが初見であった。
ヴァイオリン兼サブでボーカルを務めるオッリが、ステージ上を激しく動き回り、客席も上手く盛り上げていた。たしかにお祭り向きなバンドだし、ステージ映えするように思う。
僕はここまで5バンド見た疲労もあるし、何より1つ前のBeast In Blackで燃え尽きてしまった感もあり、途中退出したのだった。次回があるなら4バンド出演くらいでお願いします。
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