周囲の森が一夜にして海と化したという伝説を持つ島イル・サン・ジャック。22世紀の旅人ミチルとロイディがこの島で出会った「女王」は、かつて別の地に君臨した美しき人に生き写しだった―。王宮モン・ロゼで発見された首のない僧侶の死体、犯人と疑われたミチル、再び消えた海と出現した砂漠。謎に満ちた島を舞台に、宿命の絆で結ばれた「女王」とミチルの物語の第2章がはじまる。
2114年の島国の小国を舞台とする『女王の百年密室』に続くシリーズ2作目。
前作と異なり、かなり現代よりも進んだ科学を活用して生活している国の様子が描かれている。主人公のミチルとパートナーロボット(ウォーカロン)・ロイディの会話も、より情緒的で、ミチルのロイディへの深い愛情と、あくまでも淡々としているロイディの温度差が楽しく読める。
首を切られたことの真相は、ロボットやクローンという概念の倫理観や、人間を構成する脳と身体のどこまでが個人か、といった問題を突き付けてくるようで思わず考え込んでしまう。
そして何といっても、今回の物語に登場する女王メグツシュカもまた、前作の女王デボウに負けず劣らず、理知的で圧倒されてしまう魅力的な人物だ。メグツシュカ様の台詞にはしびれる。
「科学的に説明ができないものは実在しません。今は不思議でも、いずれは明らかになります。不思議とはつまり、将来の理解への予感ですね」
同じ作者の『四季・冬』とは、確かに内容がリンクしているのだけど、私は『女王の百年密室』だけ読んでも充分に楽しめると思います。
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