「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される六つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のふるえを温かな視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。
女子高を舞台に、学校の保健室の先生である神野菜生子が日常のちょっとした謎を解いて行く短編が折り重なって、最後に通り魔に襲われた女子高生についての解釈が物語りに浮かび上がってくる連作短編集。
読後に少し微笑ましい気分に浸れる短編が多く、サクサクと読み進めることができる。どのエピソードも探偵役となる神野先生のことは同僚の先生や学校の生徒など、第三者の視点から描写されていて、一歩退いた立ち位置からしか関わらないことが多いのだけど、最後の最後にこの神野先生の、ものすごく人間臭いところが描かれて彼女の魅力が爆発する。ラストの終わり方もニヤニヤが止まらない。神野先生の幸せを願わずにはいられなくなる作品である!
女性作家というとこれまで篠田節子や宮部みゆきなどを専ら読んでいたのだけど、この加納朋子という人の文章は軟らかで年頃の男の子女の子の心理描写も巧みで、初めて読んだけど大変面白く読めた。他の作品も是非読んでみたいと思った。
最近のツッコミ
参号館 日記(ariyasacca)