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2019-02-03 (日) [長年日記]

[雑記]『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』

DVDの郵送レンタルから、映画のストリーミング配信、独自コンテンツ製作へと業態を進化させながら驚異的な成長を続けるNETFLIX。その成功の秘密は、型破りな人事制度に支えられたカルチャーにある。「業界最高水準の給料」「将来の業務にふさわしくない人は解雇」「有給休暇は廃止」等、同社の元最高人事責任者が刺激的な戦略の精髄を示す。「シリコンバレー史上、最も重要な文書」と呼ばれたNETFLIX CULTURE DECKを元に書籍化!

Netflix従業員に求められる行動規範「Netflix Culture Deck」が、どのような試行錯誤を元に生まれたか、同社のChief Talent Officer(最高人事責任者)を14年間に渡って担当したパティ・マッコード氏による振り返り本。

SunやBorlandの人事畑を渡り歩いた華々しいキャリアを持ってる人であるが、Netflixに入って以降は、これまでの大企業における人事戦略へのカウンターのような施策を次々と導入していて、何故そのような施策に行き着いたのかが語られている。また、彼女自身が女性である事から、多様性や女性の雇用についても強めの言及がされている印象を持った。

以下は本に何箇所か入れたマークを読み返しての僕の雑感である。

  • DVD郵送レンタルをメインにしていた頃に遭遇したドットコムバブル崩壊によって大規模レイオフを実施した時に残ったハイパフォーマーを中心とする少数精鋭の時期に、「優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底」が大切だと気付いたとのこと。
    • テーブルサッカー、無料の寿司、莫大な契約ボーナスやストックオプションよりも大事。これどう見てもGoogleの事を言っている。
    • GoogleはGoogleで、「従業員を成熟した大人として扱う」表現方法がNetflixとは異なるだけじゃないかなーと思った。
    • レイオフを嵐を過ぎた後で残ったのが優秀な社員だけって、本当なんだろうか? 普通は優秀な人から居なくなりそうだが。
  • 「問題が起こったら当事者同士でオープンに話し合うこと」、これはめちゃめちゃ大事だと思った。
    • 人から人への言伝や噂話というのは、どうやってもノイズが混ざるので、自分も「それ直接いったの?」「本人とはもう話したの?」という問い掛けは常に意識したい。
  • 同僚へのフィードバックシステム、元々は匿名コメントだったものにエンジニア達が自主的に署名を付けてコメントし始めてやがて経営陣が受け入れてシステムが修正された話、凄まじい。
    • 同僚や部下・上司へのフィードバック、匿名が良いのか実名が良いのかは明快に答えの出づらい問題だと思ってる。
    • 個人的には実名の方が良いのではないかと考えているのだが確信が持てないでいる。ボトムアップでこういう変化が訪れる事は凄いし、経営陣も認めて受け入れる姿勢が凄いと思う。
    • 評価システムのつくりで「匿名のときに正直になるのが一番だ」という誤ったメッセージを送ってしまうという指摘は、鋭い考察である。
  • 創業者兼CEOであるリード・ヘイスティングスが、捨てられたと思っていた従業員のアイデアをきちんと憶えていて敬意を払ってくれるエピソードは、単純にいい話。
    • 関係無いけど、本書の中で何度も「リード」という名前で登場して、その度に「技術リードとか事業リードといったポジションの人が居るのかな」と頭がこんがらがる。
  • A級プレーヤーがA級プレーヤーとして腕を振るえるにはカルチャーフィットよりも事業フィットや組織フィットが大切なんだなと思った。配役によってパフォーマンスの出る出ないは絶対にあると僕も思う。
    • 「ジョブローテーション」って本当に意味無いし、Netflixではローテーションよりも先に解雇が通告されるのだろう。
  • 採用の文化として、候補者が1人で待っているのを見かけたら従業員は必ず声をかけよう、マネージャーはどんな会議よりも採用面接を優先しよう、などなど、採用エピソードには本当にいい話が多い。
  • NHLの伝説的コーチとテレビ番組で共演した際に、1シーズン80試合あるうちに10試合ごとに選手へフィードバックしてるというスポーツコーチングの秘訣が、まさにNetflixでも当てはまるというエピソードも良かった。
    • これは言い換えれば、コーチング役をする人は、定期的かつ短いサイクルで1on1をしましょうと読める。僕も共感する。
  • Netflixの事業にフィットしなくなった人には、より活躍できる企業への転職を勧めて解雇するというのも、型破りである。
    • ただ解雇規制の強い日本で働いているからこういう感想を持つだけで、シリコンバレーだと案外よくある話なのかも知れない。
    • 著者自身もこの文化によってCTOを辞する事になったという点も、なかなか凄いエピソードだと思う。

この本は読んだ人によって響くところは色々違うようですが、僕にとっては、Netflixが社員に裁量と報酬と透明性を与えてるところが印象的でした。

それほどページ量も無いし、翻訳もちゃんと著者が女性であるところを汲み取って日本語表現になっていて、読み易いです。書いてて気付いたけど、訳者の人も女性ですね。

日本でDVD郵送レンタル事業から別事業へピボットした企業、思い付くのはDMMやTSUTAYAのカルチュア・コンビニエンス・クラブだけど、企業イメージとしてはDMMの方がNetflixにより近いかな? 映像事業への投資という意味ではAbemaTVをやってるサイバーエージェントも当てはまるのかも知れない。

NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~(パティ・マッコード)


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