犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
結構前に読んだのだけど、この作品はかなり面白かった。社会派ミステリと言うのかな、
さまざまな立場の人間が、一人の死刑囚が冤罪か否かを巡って日本の死刑制度を向き合うことになる。
特に、罪人に対しては厳罰を、と考えていた刑務官の南郷の、死刑制度に対する考え方の変化を通して、読者に死刑制度の是非を鋭く問いかけている。
最後のどんでん返しの展開は、ご都合主義っぽくてちょっとどうなの、という感じもするけども、それ以上に、刑務官の仕事や、しばしば報道で話題になる法務大臣が執行命令書にサインするまでの手続きなど、司法について知らなかったことが多く、「そうだったのか」と思いながら読み進めることができた。裁判員制度の始まる前のタイミングで本書を読めたことは幸運だったと思う。
6作を収録した、篠田節子の短編集。
恋愛小説の皮をかぶったホラー小説というべき一冊で、どの作品も「どんな怪談よりも、男女のドロドロした感情が一番怖い」と思わせる凄味がある。
中でも『コンセプション』では、絶対に勝てない才能というか、自分よりも圧倒的な魅力を持つ同性と出会ってしまった時の、どうしようもない劣等感が見事に文章で描かれていて唸ってしまう。強烈な嫉妬心を描写させたら、篠田節子の右に出る書き手はそうそう居ないと思う。
かなり面白かった。
愛する妻を殺され、汚職の疑いをかけられたベテラン刑事・蛯原。妻が失踪して途方に暮れる高校教師・辻。事件の渦中に巻き込まれた二人は、やがてある宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始するのだが…。新本格の雄が、綿密な警察取材を踏まえて挑む本格捜査小説。驚天動地の結末があなたを待ち受けます。
怪しげな宗教団体が運営するフィットネスクラブを舞台にしたハードボイルド小説、なんだけど、最後のトンデモ展開で、読み終わってから壁に投げつけたくなる。
地雷叙述トリックが好きな人におすすめ!
東京杉並区で起きた連続誘拐殺人事件は、死体に残されるトランプの絵柄から“ジョーカー連続殺人事件”と呼ばれた。田宮亮太は、自供により被告として法廷に引き出されるものの、一転して無罪を主張し、逆転の秘策を練る。一方では新たな誘拐事件が発生し、息子を取り戻すために、一人の母親が孤軍奮闘をしていた。姿を見せない真犯人はどこに?そして、事件の真相は?驚くべき結末が待つ新趣向の誘拐&法廷ミステリ。
交互に描かれる容疑者と、その母親の視点を通して、「いったいどんな結末が待ち受けるんだ!?」とかなりワクワクして読めるのだけど、最後のどうしようもないゴミトリックで「ズコー!」となってしまう残念な本だった。
この人は、後半へ含みを持たせて、読者の視点を欺きながら物語を構築するのがもの凄く巧いだけに、どうしても作品の読後感は最後のトリックの出来に左右されてしまうのだけど、見事に悪いパターンになってしまった例だと思った。
本当に残念な作品だった。途中までは、過去最高傑作ではないかと興奮しながら読んでいただけに・・・。
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