2021年は当時の菅義偉首相が率いる日本政府の決断や発信について、とくに新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の感染拡大が収まらないまま東京五輪に突入して行く様を「インパールの頃から変わっていない」「バターン死の行進が再来した」といった、第二次世界大戦の日本軍に例えた批評(多くは批判)をしばしば目にした。
そういえば僕も名著とされた『失敗の本質』を完読しないまま積んでいたなと思い出し、これを機にちゃんと最初から読み直すことにした。
本書は組織学の側面からアプローチした、日本軍と米軍の違いを述べた研究書である。IT企業で働く人にとっても、近年よく聞くアジャイル開発や心理的安全性、ミッション・バリューの浸透、デザイン思考といった、様々なキーワードを思い出すであろう内容になっている。書かれたのが1984年(昭和59年)、自分の持っている文庫版でも1991年(平成3年)に初版が出ており、30~40年経っても通じる、きわめて普遍的なことが書かれていると分かる。逆に言うと、米軍が第二次世界大戦当時からもの凄く進んだ考え方でかつ失敗経験を基に自己学習できる組織だったと思い知らされる話で、こりゃ物的・人的リソースの差を抜きにしても、全面戦争なんかして勝てっこない……。
構成としては、
と、史実に基づく6つのケーススタディから、日本軍のグランド・デザインの不足や組織構成の失敗を浮かび上がらせる。
よく言われるように本書でも帝国陸軍はめったくそに悪く言われ、帝国海軍の方がややマシではあったと評されているものの、軍の上層部では情緒や空気に支配されて物事が決定され、日露戦争での成功体験にこだわり過ぎてドクトリンを改訂できないまま世界大戦に突入する様など、今日的な日本の組織でも見かける光景のように思えて、読んでいてなかなか厳しい気持ちになる。
米軍の強みとして、能力と実績があれば将校として若手も抜擢できる点も強調されており、戦後日本の復興期においては財閥解体などで半強制的に前例主義・権威主義が一時的にリセットされたため復員した若手実業家たちによる企業経営が上手く行ったと総括されているのは興味深く読んだ。一方で、欧米企業の模範解答があってそれを洗練させるのは日本企業が得意ともあり、家電や半導体では上手くシェアを獲得できたがこの先はフォローすべき先行指標の無い世界で自らルールを作って行かねばならないし、戦後の経営者も長老にさしかかっていて若いリーダーの抜擢が必要だと戒める形で結ばれていて、「そうか、1980年代や1990年代は家電や半導体では世界トップクラスだったんだよな……。もう韓国・中国・台湾に抜かれたよ」と切ない気持ちになった。
次々と若きリーダーを擁する新興勢力が登場するアメリカ企業が2020年代に入っても未だに強い理由も垣間見えた気がするし、日本でも豊田章男さんのようなリーダーを輩出する企業が残っていることは救いがある。しかしリーダーの交代を上手くやれるのかねぇ。豊田章男・孫正義・永守重信・柳井正といった人たちの後任はどうなるんだろうか。サンリオが創業者の孫である辻朋邦(当時32歳)に代替わりできたのは、もしかして凄いことなのか? 任天堂で山内溥→岩田聡とバトンを渡した事例は、文句なしに凄いよね。
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