作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で「メドゥサを見た」と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死。
失われた原稿を求めて物語が核心に迫るにつれ、怖くて仕方が無いのに、ページをめくるのが止まらなくなる魅力のある一冊。
次第に複雑さを増す作品構造に惹き込まれ、ラストでは、読者はただ呆然とするばかり。
文庫巻末の解説によると、著者はかつて、コンビ作家の岡島二人を名乗り、名作『クラインの壺』をほぼ一人で書き上げたとのこと。言われてみれば、どこかSF設定を感じさせる不思議な世界観に共通項を感じる。
非常に良く出来たホラーサスペンスで、最後の展開は好みが分かれそうだが、途中までの圧倒的な不気味さ、何とも言えない救いの無さは、好きな人にはかなりおすすめできる。とても面白かった。
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