国民学校初等科に通う堀川真樹夫と中沢大吉は、ある時同級生の月ノ森雪麻呂から自宅に招待された。父は町で唯一の病院、月ノ森総合病院の院長であり、権勢を誇る月ノ森家に、2人は畏怖を抱いていた。〈ヘルビノ〉と呼ばれる頭部が蜥蜴の爬虫人に出迎えられた2人は、自宅に併設された病院地下の死体安置所に連れて行かれた。だがそこでは、権力を笠に着た雪麻呂の傍若無人な振る舞いと、凄惨な事件が待ち受けていた……。
『粘膜人間』に続く粘膜シリーズ。物語に前作との継続性は見られないが、
といった世界観は共通しており、中編3つから成る連作のような形式。第63回日本推理作家協会賞を受賞している。
主人公格と言えるのは、傍若無人でワガママな金持ちの雪麻呂坊ちゃんと、「爬虫人」で下男の富蔵のコンビ。日本兵に憧れる爬虫人の富蔵の、どこか憎めない気持ち悪さと、富蔵の故郷であるアジアの国ナムールの壮絶さと爬虫人たちの確立した社会性に圧倒される。
ラスト数ページの絶叫マシンのように爽快な読書体験は最高に尽きる。とにかく構成が巧く、デビュー作よりも数段すごくなっている(グロ描写は前作の方がキツくて、本作は万人向けになった)。エロくてグロくて馬鹿馬鹿しいのに、最後に泣かされてしまうという唯一無二の作風。めちゃくちゃおすすめ。
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