新しい文化が生まれる場所の真ん中には、インターネットと音楽があった。2007年、初音ミクの誕生と共に始まった三度目の「サマー・オブ・ラブ」とは。
いわゆるニコニコ三大ジャンル(東方、ニコマス、ボカロ)の紹介ではなく、「VOCALOID2 初音ミク」が公開されてからのムーブメントが「音楽史においてどんな位置付けなのか」と云う1点の考察にフォーカスして書かれた、初音ミク史読本と呼べるもの。DTM・MIDIといった同人音楽文化の下地となったシーケンサーの歴史から始まり、クリプトン社やヤマハ社のキーマン、有名「○○P」からインタビューで拾った言葉が丁寧に引用され、クリエイター達が初音ミクに対して持っていた熱量が多く綴られている。サマー・オブ・ラブとかって正直よく知らないけど、「初音ミクとはカウンターカルチャーである」という見方は、確かに納得できる部分が多々ある。
僕自身も2007年といえば大変に残念なニコ厨だったので、ワンカップPが待ち望んでいる頃から、ミクさんがネギを振り始める頃、メルトで溶けてしまう頃などはリアルタイムで見ていたのだけども、段々とニコニコ動画という場を楽しむ時間が少なくなり、今やすっかり初音ミク関連の情報には疎くなってしまった。小中学校の卒業ソングに使われているようなニュースを見る度に、「え、今ってそんな事になってるの!?」という状態だったので、本書で最新のミクさん事情に知識をアップデートできた。
何を隠そう、セガ信者を自称しながら『Project DIVA』も一度も遊んだことが無いので、今もミクさんブームは続いていると思い込んでいたが、どうも2014年現在、初音ミク文化はピークを越えて緩やかな停滞期にあるらしい。終盤では、「10年後も100年後も、クリエイターに初音ミクを使ってもらうためにどうすべきか?」といった話もインタビューされており、「2014年の初音ミク」がよく分かる本だった。
海外にも知れ渡ったミクさんだけど、日本以外では「ニコニコ動画発祥」という点も認知されてるんだろうか? ChromeのCMはじめ、ボカロPV輸出に使われてるインフラって圧倒的にYouTubeだよね。かつてはYouTubeのコンテンツにタダ乗りして始まったニコニコ動画だったけど、今ではニコニコ動画で生まれた文化をうまく利用してYouTubeのクールジャパンコンテンツが拡充してるように見えて、歴史は面白いなぁと思ったり。
ほんとに全然ニコニコ動画を追わなくなってて、この本を経由して初めて知ったんだけど、この『ODDS&ENDS』って曲、めちゃくちゃ良いですね。
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