Ruby on Railsの作者DHHが所属している事で著名な37 singnalsが長年実践して来たリモートワーク(在宅勤務)の経験を基に、その優位性やメリット・デメリット、気をつけるべき点を簡潔にまとめた本である。
どこにいても世界中の人と簡単にコミュニケーションできるのに、なぜオフィスが必要? 人生の大切な時間を通勤に費やすのはナンセンス! 優秀な人材と一緒に働きたければ、物理的距離なんて関係ない!前作『小さなチーム、大きな仕事』で圧倒的な支持を集めたカリスマ経営者たちが、今回取り上げたのは「リモートワーク」。世界に散らばる36人の社員を率いて、数百万人ものユーザーにふさわしい働き方を伝授する。会社や組織にまつわる固定観念が、根底からくつがえる!
リモートワークこそが次世代のワークスタイルと考える彼らがアンチパターンとして挙げているのが、マリッサ・メイヤーが就任して真っ先にリモートワークを中止させたYahoo!や、都会にオフィスを構えて無料ランチなどの手厚い福利厚生で社員を拘束する企業(要するにGoogleの後追い的な制度を導入しているシリコンバレーの企業)などだ。競争の激しい都会でこういう人材の集め方をやっていると、会社に留まってほしい人でも、隣の芝生を見てあっさりと別の会社へ転職してしまうため、地方でリモートワークを導入した方が優秀な人材を長く雇用できる、という主張には一定の説得力があった(この際に、地方勤務でも待遇は都会と同じ水準にする事を重要なポイントとしている)。
「そうは言っても、在宅勤務が上手く回るのなんて37 singnalsやGitHubみたいに少人数かつ優秀な人材が集まってるところだけでしょ」と斜めに構えながら読み進めていたけど、アメリカでの導入事例として大企業も多く挙げられており、向こうではワークスタイルの変化は少しずつだが確かに広がってはいるようだ。
実際のところ、日本でも通勤時間は多くの人にとっては苦痛で、フレックス勤務制度である程度は緩和が可能だけど、会社まで行かなければならない点には変わりない。リモートワークにチャレンジしようとする時に、適当な人員を数人ピックアップして強制的にやらせてみて、「やっぱり駄目だったね」と結論付けられるのがありがちな失敗パターンとして紹介されているが、日本の企業だと確かにこれは多そうである。若手にやらせてみて中間管理職が「やっぱり駄目じゃんね」みたいな光景、容易に想像が付く。やるならマネージャなども揃って、3ヶ月くらいは導入してみる事が大事なのだそうだ。
あと、リモートワーク導入で特に気を付けるべき点として、「怠け過ぎよりも働き過ぎに注意すること」「孤独にならないように対人のコミュニケーションは必要」という指摘も印象に残った。要するにぼっちにリモートワークは無理で、家族や近所の人、コワーキングスペースで適度に交流をしろという事だろうか。
長時間のミーティングへのうんざり感、全員が顔を揃えて集う機会が少ないからこそ濃密なコミュニケーションが生まれる事、採用前に未来の同僚達とランチに行ってもらうスタイルなどなど、面白いトピックが沢山あった。示唆する点が豊富な割に、1時間くらい集中すればあっさりと読めるのも良かった。
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