日本SF大賞受賞。二・二六事件にタイムスリップしてしまった若者の成長記。
これは泣ける。終盤の手紙のシーンは号泣必至。「小説なんかで感情移入して泣く奴はバカだ」とかいきがっていたオレが、おんおん泣いてしまったのだから、もう間違い無い。歴史の勉強にもなる。
★★★★☆ 文藝春秋
山本周五郎賞受賞。
刑事が失踪した女性を探すサスペンスもの。社会的なテーマと言うか、クレジットカードによる自己破産をメインとして扱っている。
ラストは何とも言えない終わり方。いやはや、カード社会は恐ろしい。
★★★★ 新潮社
他の人に見えないものが見える力を持つお初を主人公に置いた時代小説で、連作形式の短編集となっている。
何か大仕掛けを打って悪党を懲らしめるとった話ではなく、あくまで霊的な出来事は霊的な出来事として扱われた人情話である。主人公のお初を筆頭に登場人物が非常に魅力的で、楽しみながら読むことが出来た。
お初と右京之介のまだるっこしい関係が、また良いのだ。
★★★☆ 講談社
“財布”を擬人化してしまい、それぞれの財布の視点から持ち主の行動を記録した11のエピソードから、一つの大きな事件を描く連作短編集。
この財布達も、一つ一つが個性的で愉快である。上着や鞄に入れられている財布達であるが故に、事件の要点部分が巧みにはぐらかされてしまい、早く続きを読みたいと思わせてくれる快作。凄く面白かった。
★★★★★ 光文社
独立した5編収録の短編集。本のタイトルには犯罪と付いているものの、平和的な物語が多い。
『サボテンの花』など、どう見ても感動的な“ちょっといい話”なんだが、きちんと物語の主軸には、子供達の不可解な行動といった謎と謎解きが置かれている。読後感の清々しい一冊。
★★★★ 文藝春秋