わははは、面白い。頭脳明晰、行動力抜群の名探偵・天下一大五郎の活躍を14篇収録した短編集。
ミステリの"お約束"をことごとくブチ破って行くのが非常に痛快。自らをミステリ好きと称する人は読んでみて欲しい。爆笑必至の快作。
★★★★ 講談社
"本格推理"という概念を失ってしまった世界に迷い込んだ作家が天下一大五郎となって次々と起こる事件を解決していく。『名探偵の掟』の続編かと思いきやそうではないらしい。
この話はラストの落とし方が良い。本格推理というものを一度見つめなおす為に、作者が自身に向けて書いた作品なのかもしれない。
★★★☆ 講談社
これは本当に素晴らしい作品。一歩間違えば”お約束”ととられがちなタイトルながらも、かなり斬新な切り口の設定で事件の舞台を造り上げたところが凄い。
事件の最後も意外過ぎる終わり方で期待を裏切らない。ところどころに綾辻作品に対する当てつけのような部分があるのはわざと?
★★★★☆ 講談社
本当の記憶と偽の記憶の狭間で迷う主人公が自分に何かをした巨大企業に挑む・・・とか書くとゲームみたいでアレなんだが。タイトルに偽り無しのラブストーリーかつミステリな作品。
伏線は読者が気付き易いようにしてある箇所も多いが、話は大変面白い。恋愛小説的要素は、やや三文臭いと感じる人も居るかも。あくまで自分の記憶を取り戻すサスペンスである、という読み方で良し。
★★★★ 講談社
幼い頃からライバルだった二人が、ある殺人事件をきっかけに刑事と容疑者という立場で再会を果たす。刑事の視点から過去の因縁のエピソードを交えつつ、容疑者を追っていく。
ラストの墓の前での、二人の会話シーンがカッコ良すぎ。
★★★★ 講談社
とある事件をきっかけに世界初の脳移植を受けた主人公が、日に日にドナーの脳の影響を受けていき・・・みたいな話。テーマ的には、『パラレルワールド・ラブストーリー』に通じる部分も少しあると思う。
ミステリーと言うよりはホラー寄りの作品ですが、とても面白い。主人公の性格が少しずつ変化していく様が、さりげなく地の文に手を入れることで表現されているのがスゴイ。おすすめ。
★★★★★ 講談社
人気作家が撲殺された事件を、被害者の友人の作家の手記と、事件を追う刑事の手記の視点を交互に交えながら描いた話。
が、冒頭の方で犯人はアッサリと捕まって、"何故殺したのか"という動機を解明する為に刑事が奔走する。いわゆるホワイダニットに重きを置いた作品。
細かい仕掛けが何重にも仕掛けられており、刑事が次々に行き着く新たな事実に何度も何度も驚かされる。かなり面白かった。
★★★★☆ 講談社
津村光平がアルバイトをしているビリヤード場がある、旧学生街を舞台に起こる殺人事件。バイトの同僚である松木の死と、それに続く2つ目の殺人事件を巡って、光平の視点と刑事・香月の視点から事件を追って行く。
映画的な演出を意識したようなシーンが多く、章末の文章一つ一つが印象に残る作品。どうにも遣り切れない展開が続き、さぁ泣いてみろ、みたいな押し付けがましさを少し感じてしまった。
★★★☆ 講談社
白馬のペンション「まざぁ・ぐうす」での兄の自殺に疑問持ったナオコは、マコトと共に問題のペンションへと調査に乗り出す。
密室や暗号のトリックが、しょうもなくて割とがっかりさせてくれます。序盤で明かされるマコトの性別(ネタバレ)が、読んでて一番驚いてしまった。
★★☆ 講談社
婚約者の朋美を事故で失った高之は、朋美の父・信彦から別荘に誘われる。しかし朋美の生前の関係者が集められた別荘は、銀行強盗に占拠されてしまう。
この後、主人公達は強盗の余興にと、朋美の死を巡ってあれこれ議論させられることになるのだが、強盗に監禁されながら推理を展開するという極めて特殊な状況は本作の面白さのひとつである。激しいどんでん返しの末、最後には「そんなのアリ!?」という凄まじいオチが待っている。おすすめの一冊。
★★★★★ 講談社
警察官・和泉康正は妹の園子を訪ね、彼女が死んでいるのを発見する。偽装自殺だと疑いを持った康正は、こっそりと証拠品を持ち帰り、独自に犯人探しを始める。康正はやがて、容疑者を園子の恋人であった佃潤一と園子の親友である弓場佳世子の二人に絞る。
結局、最後の最後までどちらが犯人かは明示されずに物語は終わってしまうのだが、オレの読んだ文庫版には解説が書かれていたので、何とか理解出来た(納得は出来なかった)。オレの恥ずかしい推理も書き記しておく(ネタバレ注意)。
ポイントとなるのは、潤一と佳世子の利き手が異なるかどうかであると思うのだが(両方とも右利きであった場合、犯人を特定出来ないから)、潤一が右利きであることは分かっても、佳世子の方がはっきりしない。彼女は右手で毛筆ペンを持ち、住所と名前を書いた。見事な楷書だった。
弓場佳世子は右手を頬に当てた。
といった箇所から、佳世子は無意識に右手を使っているから右利きではないかとずっと思っていたのだが・・・(例えばオレは右利きだが、思わず口元や頬に手を当てるのは必ず右手だ)。最後に康正が答えを出したと云うことは、佳世子が左利きだと分かる場面を目撃したことになるのか。何だか釈然としない。
ところで、本書の見どころは康正と加賀刑事のやり取りである。東野圭吾は、こういった男の友情的な描写(ホモ描写ではないぞ)が凄く良い。カッコ良いのである。最後の場面なんて、読んでいて唸ってしまうほどにシビレる。自力で推理云々に興味が無い人にも、お薦めの一冊である。
★★★★★ 講談社