読書感想文

折原 一

倒錯シリーズ

黒星警部シリーズ

倒錯のロンド

折原 一氏のデビュー作。もうひたすらに叙述トリックにこだわった作品を書いてる人。

推理小説新人賞に応募しようとしていた作品を盗まれた作者と、盗作した犯人とで目まぐるしく視点が変わる作品。トリックの大仕掛け自体は非常にキレイに決まってるけど、なんか事件の発端が偶然性(ネタバレ)に頼りすぎててゲンナリ。

★★★★ 講談社

倒錯の死角

倒錯シリーズ第二弾。相変わらずの日記形式の文体にトリックが駆使されている。

ハッキリ言ってかなり辛すぎる部分があってツッコミ所も多いが、物語にグイグイ引き込まれてしまうので目をつぶれる。覗く者と覗かれる者の視点、そして騙されまいと思っていても騙されてしまう意外な真相と、文句無し!

★★★★☆ 講談社

螺旋館の殺人

倒錯シリーズの番外編的作品。他のシリーズとは、登場人物等が少しだけリンクしてる。

ちゃんとフェアにやっていると思うし、面白いは面白いんだけど、本人によるトリックの解説が痛い。

★★★★ 講談社

鬼面村の殺人

密室マニアの黒星警部の活躍するパロディ本格推理。ギャグ満載でテンポが良いので読み易くてオススメ。

家屋消失トリック物としての出来はまずまず。

★★★★ 光文社

猿島館の殺人

再び黒星警部が登場する作品。今回の舞台は東京湾に浮かぶ孤島・猿島。

キャラが立ってて面白いんだけど事件としてはイマイチ。

★★★ 講談社

丹波家殺人事件

一代で莫大な財産を築いた丹波竜造が、ヨット航海中に遭難。葬儀に集まった丹波家の面々は、竜造の遺書を巡り確執が表面化する。そんな中、財産のほとんどを相続することになっていた長男・健太郎が謎の死を遂げる・・・。

筆者の巧みなストーリー展開により、読者は「もしや竜造は遭難したものの生き延びたのではないか?」と疑念を抱きながら読み進むことになる。そして最後には、お約束のどんでん返しが待っている。

かなり面白い一冊ではあるが、黒星警部の登場する意義が全くと言っていいほど無いなぁ・・・(他の話でも活躍してないけど、一応主人公なんだしもう少し事件に絡んでも良いような)。

★★★★ 講談社

黄色館の殺人

虹子のドジにより、犯罪集団・爆盗団から黄色館の秘宝が盗まれないよう夜通し見張ることになってしまった黒星警部。しかし、居眠りしている間にまんまと盗まれてしまうのであった。その後事件は黄色館のオーナーである阿久津又造一家を巡る殺人事件にまで発展。果たして黒星警部は事件を解決して、毎度の汚名を返上することが出来るのか!?

全然事件解明できないまま、関係者を集めて推理ショーを披露することになってしまう警部の間抜けぶりが相変わらず憎めない感じ。作中の叙述トリックは必要性が良く分からなかった。

★★★ 光文社

水の殺人者

牧原憲一はある日、会社のコピー機で「殺人リスト」なる紙を発見する。自分の名前が一番上に書かれているのを見て激昂した彼は、同じ会社の百瀬邦彦の仕業に違いないと考え、百瀬の名前を一番上に付け足すという悪戯をする。しかし百瀬は数日後、その通りに死んでしまう。次々にリストには名前が加えられていき、その通りに殺人は実行される。果たして事件の真相は!?という、折原ワールド全開の作品。

不可解極まりない殺人リストの秘密も、最後にはしっかりと明かされ(しかもいつもの、作者注によるページ指定付き)、読者は驚天動地の感覚を覚える・・・かもしれない。折原作品としては、普通の叙述トリックものといった感じで、可も不可もなく、安心して読める一冊。

★★★☆ 講談社

覆面作家

氏のお得意の叙述トリックモノ。作家が出てきて、1人で篭って執筆を始めて、編集者もたまに様子を見に来て・・・って、このパターンいつもと一緒やんけ!

途中まで物凄い傑作の予感がしながら読んでいたけど、「ラストでまさかコレはないだろう」と思っていた結末がドンピシャだったのでスゲエ萎えた・・・・・・。

★★☆ 講談社

仮面劇 MASQUE

いつもの叙述トリッ(以下略)。

妻と愛人に保険金を掛けて殺した"M氏"を巡る物語。こういうイニシャルの人物視点が出てきた時点で、折原読者はあれこれと深読みしてしまう・・・・・・。

トリックのキレは、正直イマイチかなと。倒錯シリーズ級のものを期待すると辛いかも。

★★☆ 講談社

異人たちの館

失踪した淳の伝記を書くよう依頼された作家、島崎が、淳の過去に幾度も登場する"異人"の関わった殺人事件への真相へと迫ってゆく様を、様々な視点から描かれている。

折原流叙述トリック構築美の完成形とでも言うべき、緻密な構成で読者を欺こうとする力作。

真相の意外性では、倒錯シリーズの方がメイントリックがストレートでシンプルな分だけ上かなぁ。

★★★★☆ 講談社

冤罪者

連続婦女暴行・殺人事件の犯人の冤罪を巡る話から始まり、社会派小説なのかなぁと思って読んでると、いつの間にか、異様な雰囲気のいつもの折原小説に。

インターネットなどの小ネタも登場して、いつも以上に大きいスケールのトリックが仕掛けられている。

★★★★☆ 文藝春秋

失踪者

通り魔殺人事件で残される「ユダの息子」という書き置きから、15年前に「ユダ」を名乗り捕まったが当時15歳であったため「少年A」としか報道されなかった謎の人物との関連が浮かび上がる。「ユダの息子」とは誰なのか?当時「少年A」だった人物は?と気になって、作者お得意のどんでん返しが待つラストまで、一気に読めてしまう。

少年法で「少年A」としか報道されない現実を逆手に取って、「少年A」が誰か分からないまま物語は進むため、いつもの巧みな誤導によって読者の思い描いていた正体とは全く別人が明らかになる。この騙されっぷりは、すんごい快感だ。

★★★★☆ 文藝春秋

蜃気楼の殺人

銀婚式を迎え記念旅行へ行った野々村省三と文恵の夫妻。しかし東京で一人暮らしをする娘の万理子のもとに、父・省三が殺されたことと、母・文恵が姿を消した旨が警察からの電話で告げられる。事件の真相を探るべく、真理子は両親の旅行先であった能登へと向かう。

冒頭の謎深いシーンを最後まで引っ張ったり、見るからに怪しい(ネタバレ)同名の友人だとかも、「ああやっぱり」という具合に収束していく様が見事な作品。折原トリックの王道を行く一冊。

★★★★ 光文社

ファンレター

年齢も性別も一切謎に包まれた覆面作家・西村香を巡る10個のエピソードによる連作短編集。

西村香に届くファンレターと西村香からの返答という対話形式や、西村香の手記による形式、ファンの独白という形式などなど、様々な凝った見せ方をしている。

病的なほどに西村香のファンであることを主張して、無茶苦茶身勝手な要求をする連中があり得ないほど胡散臭くて面白い。こういう人物を描かせたら、著者の右に出るものは居ないだろう。渦中の人物である西村香も凄く嫌な奴で最高。

特に馬鹿馬鹿しくて笑えたのは『講演会の秘密』『ファンレター』『消失』の3つ。非常におすすめの一冊。

★★★★☆ 講談社

101号室の女

収録作のほとんどが、最後の1ページで種明かしされる叙述物という、折原ファンにとってはたまらない短編集。

どの作品も、ひねくれた登場人物ばかりだが、中でも『101号室の女』『わが生涯最大の事件』の2つに登場する人物は、特に狂っていて良い。

★★★☆ 講談社

耳すます部屋

10編収録の短編集。『五重奏』『Mの犯罪』といった、実際の事件から着想を得たと思われる話が幾つかある。

しかしながら、折原小説の醍醐味とも言えるのは、架空の週刊誌の読者投稿コーナを舞台に物語が展開して行く『眠れない夜のために』だろう。こういう馬鹿馬鹿しくて笑える形式の小説を良く思い付くものだなぁと感心してしまう。被害妄想の強い人物を描かせたら天下一品だと思う。

★★★☆ 講談社

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